コンサル転職は将来の起業・独立や経営者へのファストパスとなりうるか

コンサル転職は将来の起業・独立や経営者へのファストパスとなりうるか

最近は元・外資系コンサルの肩書を持つ起業家や投資家、あるいは上場企業の経営者が増えていて、メディアで目にする機会も多いように感じます。

中には、マッキンゼーマフィアという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、マッキンゼーを卒業(退職)して大企業の重役や起業家・実業家として活躍している方が世界中に数万人いると言われています。

実際に日本でもコンサル出身の社長・経営者として、ミスミの三枝匡氏(BCG)、パナソニックの樋口泰行氏(BCG)、BBT大学の大前研一氏(マッキンゼー)、DeNAの南場智子氏(マッキンゼー)など有名な方が多いです。

このような方々の活躍を見ていると、コンサル経験を積むことは将来的に起業・独立や経営者を目指す際の近道となるのでは、と思う方も多いでしょう。

そこで今回は、起業・独立や経営者を目指す上でコンサル転職が有効かどうか解説していきます。

「起業・独立」と「経営者」では道筋も必要な能力も異なる

まず当たり前ですが、「起業・独立」と「経営者」は分けて考えた方が良いです。

「起業・独立する=経営者になる」ということではあるものの、逆に「経営者を目指す=起業・独立する」ではないからです。

経営者を目指す上では、自ら起業・独立する以外にも「プロ経営者として、もしくは将来の経営幹部候補として事業会社に転職する」という方法がありますし、もちろんコンサルファームで経営者(パートナー)を目指すという道もあります。

また起業・独立するにしても「コンサルか、コンサル以外か」という2種類の方向性があり、どちらに進むかによってキャリアの描き方が変わってきます。

「起業・独立」と「経営者を目指すこと」はMECEではないので若干の気持ち悪さはありますが、ここからはそれぞれのステップやアプローチを分解して見ていきましょう。

起業・独立に向けた4つのステップと必要な能力

一般的に「起業・独立」する際には以下のような4つのステップとなります。

  1. 起業・独立の目的を考える( 社会のニーズ・課題を踏まえて)
  2. 何をするかを決める(誰に、何を、どうやって売るかのビジネスモデル)
  3. 事業計画を作り、必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)を集める
  4. 事業を開始し、トライ&エラーで改善し続ける

上記のステップで必要となる能力のうち、コンサルを経験することで得られる・高められるものが多いのは事実です。

  • 社会のニーズ・課題を把握するためのマーケティング、リサーチスキル
  • ビジネスモデルを整理するための戦略策定能力やフレームワーク思考
  • 事業計画を作る上では会計・ファイナンス知識、投資家や銀行からの資金調達時に必要な資料ドキュメンテーション力、プレゼンテーション力
  • 会社運営では人事・採用、法務といった経営全般に関する知識、など

一方で、起業・独立して成功するためには、企画や戦略策定(主に上記ステップ1~3で行うこと)も重要ですが、オペレーションの研鑽をはじめとした地味な仕事を継続して出来ることがかなり重要です。

コンサルの仕事でこの第4ステップまで支援することは基本的に無いので、起業・独立の準備をする段階では、コンサルというキャリアを選択したことが有利になりそうではあるものの、中長期的な事業の運営まで見据えると起業家としての成功の近道やショートカットになるかと言われると微妙なところかもしれません。

なぜなら、昨今では世の中の変化のスピードがどんどん早くなっているため、ステップ1~3は荒削りのまま、ステップ4を中心にしながらアジャイルに、PDCAを回し続けることで成功している起業家も多いからです。

そういう方々を見ると、コンサルへの転職などせず、最初から起業・独立をすれば良いのではないか、と感じます。

ただ、「人生をかけてでもやりたい!」と思えるビジネスがまだ無いという人は、コンサルとして様々な業界のビジネスモデルや戦い方・戦略を学ぶ、というのも一つの戦略です。

専門性を活かしたコンサル起業・独立であればコンサルキャリアが近道となる

どこぞのホストではないですが、起業・独立する上で考えなければならないのは、「コンサルか、コンサル以外か」

つまり、コンサルとして起業・独立するのか、コンサル以外のビジネスで起業・独立するのか、ということです。

コンサル以外のビジネスで起業・独立する場合、社会に必要とされるサービスや商品を新たに作って、それを事業として売っていくということになりますので、当たり前ですが、ゼロからビジネスモデルやオペレーションを構築していくことになります。

一方で、コンサルとして起業・独立するということは、自分自身がこれまでコンサルとして磨いてきたスキルや、知見・ノウハウを活かせる領域で勝負するということです。

働き方としては、公認会計士や税理士などといった士業に近いイメージで、一定の需要はありますし(昨今ではフリーのコンサルタントも増えています)、コンサル以外のビジネスで起業・独立するよりも圧倒的にハードルは低いです。

特に、人事コンサルや財務・会計コンサル、M&Aコンサル、ITコンサルなど、自分の専門領域(機能)を決めて、専門性を高めるキャリアを積んできたコンサルは起業・独立がしやすいです。

またコンサルタントという職業は、自分自身が商品ですので、独立に際しては高額な設備投資は必要ないですし、ファームによっては一定程度の人材流動性を保つためにそういった方々を推奨しているところもあります。

そういったファームでは、アルムナイと呼ばれるOB/OG組織を作って、その中で仕事を斡旋したり、お互いに協力しあったりすることも多いです。

独立したてのコンサルタントにとっては、立ち上げ時の売上が心もとない時期に紹介で仕事をもらえるということは、非常にありがたいものです。

経営者になるための3つのアプローチと必要な能力

コンサル経由で経営者を目指す方法としては、自ら起業・独立する以外に、主に以下3つのアプローチがあります。

アプローチ①:プロ経営人材として事業会社の経営層に入る

まず前提として、外部コンサルタントが最初から経営者・経営層として招かれるということは実は稀だと思っていただいた方が良いです。

特に大企業ではほぼ無いです。あるとすれば、コンサルファームのパートナークラスで、業界や管掌機能について相当な専門性を持っていることが前提となります。コンサル業界において、このテーマで右に出るものはいないというレベルの専門性が必要となってきます。そのため、コンサルファームでパートナークラス(もしくはそれに近いランク)まで昇進するというハードルが加わります。

一方、まだ規模の小さいスタートアップや、中小企業におけるオーナー社長の右腕ポジションという選択肢は比較的ありますし、パートナーまでならずともコンサルやマネジャークラスにもチャンスがあります。

スタートアップや中小企業では、事業のスケール化を必要としているケースが多いため、事業戦略の立案や新規事業の立ち上げ、M&Aなどの戦略系テーマのプロジェクト経験を持つ人材が求められることが多いです。

能力として必要となるものはビジネスリーダーとしての高いスキル(思考系や戦略策定能力、コミュニケーションなど)に加えて、マネジメントスキル・経験、リーダーシップなどです。加えて社外の人脈・ネットワークなども重視されることがあります。

アプローチ②:将来の経営幹部候補として転職する

大企業やメガベンチャーでも、将来の経営幹部候補として主に企画系のポジションでポストコンサルが必要とされています。 コンサルファーム出身者を将来の経営幹部候補として採用したいという企業は確実に増えてきています。

大企業には変革期にある企業が多いため、企業改革やターンアラウンド、組織再編などといった、戦略と組織(人材も含めて)を同時に検討するようなプロジェクト経験を持つ人材が求めらることが多いように感じます。

またメガベンチャーでは各事業・機能の企画職(スタッフ層)を中心として、ポストコンサル(特に若手~ミドル手前)が求められています。ただし、メガベンチャーは昔からポストコンサルを採用していて、社内にコンサル出身者が多いので、昇進ハードルはそれなりに高いです。経営者になることをゴールとするなら、昇進していく時間が一定は必要でしょう。

個々の企業によって必要な能力は異なりますが、思考系スキルや高いコミュニケーション能力、戦略・企画能力、事業・組織を推進していく力などを求める企業が多いです。

こちらのアプローチ①・②については、ポストコンサルのキャリアパスとして改めて別の記事でまとめて解説します。

アプローチ③:コンサルファームでパートナーまで昇進する

「経営者になること」をゴールとして目指すなら、実はこれが一番早いかもしれません。

コンサルファームには優秀な人材も多いため、昇進すること自体のハードルが高いということは事実ですが、好景気の影響もあり、今現在はどのコンサルファームでも深刻な人手不足になっています。

地道にコンサルとして成長していけば、意外と昇進もしやすいのではないかとも考えられます(もちろんこれはこれで相当な努力が必要ですが)。

コンサルファームでパートナーに昇進する上で必要となる能力は、過去の記事「Up or Outが当たり前?コンサル業界におけるキャリアパス」で解説した通りです。

ランクによって必要となるもの・重要視されるものは異なりますが、ベースとなる能力・スキルは、

  1. 思考系(ロジカルシンキング、クリティカルシンキング)
  2. コミュニケーション系(プレゼン、ファシリテーション)
  3. 高い専門性(会計や人事といった機能、もしくは業界や事業について)
  4. マネジメントスキル、リーダーシップ

といった、4領域が中心となってくると思っていただいて良いです。

コンサル転職を通じて得られる能力は有効だが、まずは目的の明確化が先決

ここまで見てきた通り、それぞれのアプローチにおいて必要となる能力・スキルはコンサルとして得られる・高められるものと一定の重複があるということはわかっていただけたかと思います。

他の業界と比べると、起業・独立や経営層への道を目指す上で必要となる能力・スキルを身につけやすいキャリア・環境である、ということは少なくとも言えるのではないでしょうか。

ただ、コンサルを経験したからといって、必ずしも起業して成功しやすいとか、ポストコンサルとしての転職先で活躍しやすいというわけではないです。どこで、何の仕事をするにしても一定の努力と成長、そして会社や社会に対しての貢献が必要です。

また肝心なこととして、そもそも「なぜ起業・独立したいのか」「なぜ経営者になりたいのか」という目的の整理が必要なことは忘れないでください。

「起業・独立する」「経営者を目指す」というのは、その先にある「何か」を実現するための手段であり、ゴールではないです。

最初のきっかけは、「かっこいいから」「社長になってお金持ちになりたい」「有名人になりたい」「異性にもてたいから」など、何でも良いです。

ただ、コンサルへの転職を具体的に考えた時に、一歩立ち止まって

  • 5年後、10年後にどうなっていたいのか?
  • またその時にどんなことを成し遂げていたいのか?
  • もしくはどう生きていきたいのか?どうありたいのか?

というようなことを薄っすらでも良いので考えてみてください。

自分はコンサルとして長く働いていたいのか、いつかコンサルを卒業して別のことをしたいのか(それなら何故コンサルを挟む必要があるのか)といったことを、自分なりに整理しておくと良いでしょう。

それが明確になっていれば、それがどのような道であっても自分自身にとっては、“ゴールに向けた最短の道”となるはずです。

コンサルで起業・独立なら迷わずマッチングサービスを活用

さて、コンサル転職が起業・独立や経営者の近道になるかどうかというテーマについて、具体的に理解・イメージいただけましたでしょうか?

上述した通り、コンサルとして起業・独立したいという方にとっては、コンサルファームに転職して専門性とビジネススキルを高めるというアプローチは非常に有効です。

そこで最後に、コンサルとして起業・独立する際に、活用できるサービスをご紹介しておきます。詳しくはまた別の記事にも書きますが、フリーコンサルのマッチング・紹介サービスは市場が急拡大している業界で、顧問・コンサルの斡旋サービスと、スポット型のサービスの2つに分かれています。

今回は代表的な企業・サービスのみご紹介しておきます。

顧問・コンサル斡旋サービス

i-common(アイコモン)/パーソルキャリア

転職サービスのdodaを運営するパーソルキャリアが運営している事業の一つです。フル稼働ではない顧問案件の紹介が多いです。

フリーコンサルタント.jp/みらいワークス

みらいワークスというマザーズ上場の会社が運営しています。フル稼働の案件が多いです。またみらいワークスが直接仕事を請けて、そのチームの中に加わるというプロジェクトもあります。

スポット型の知見提供プラットフォーム

ビザスク

スポットコンサルという名称でサービス提供しています。 エキスパートネットワーク市場といって、海外は一般的なサービスで、日本でもコンサルや投資ファンドなどが活用し始めています。グローバルではGLGという会社が圧倒的に大手です。

ちなみに、コンサルとしてではなく他の事業で起業・独立したい、という場合は、まず副業として何かをスモールにでも良いので始めてみることがおすすめです。

「まずは行動が大事」

これはコンサルを卒業した知人がよく言っています。

投資(株・FX、不動産)、アフィリエイト、せどり・物販、クラウドソーシング等、最近は副業にも様々な選択肢がありますし、副業から起業・独立した人も多いです。

こちらは別途、記事を書くのでそちらを参考にしてみてください。